「あっ、あの……っ! 千草さん!」
車に乗り込もうとすると、後ろから声を掛けられる。
「…………」
気持ちを入れ替えてゆっくり振り向けば、ひとりの女子高生が立っていた。
そんなに頻繁ではねぇ……けど、見覚えがある。-mia-に来る客。俺を指名する、大勢の中のひとりだ。
……またこのパターンかよ。
案の定、女子高生は俺に想いを告げてきた。
好きです、付き合ってほしい、と。
心の中ではウンザリしながらも、営業スマイルを見せる。
「……俺のどこが?」
尋ねると、真っ赤になって小さく口を開く。
「えっと、いつも優しくて……ニコニコしてて……格好いいのに気取ってないし、こんな人、本当にいるんだなぁって……」
そんな人間ホイホイいて堪るか。
いたわ。昴、アイツな。
残念ながら溺愛してる彼女がいるけどなってこれじゃあ俺がおこぼれみたいじゃねぇかよ。



