悔しくて、それなのに何も言葉が出なくて、あたしは視線を床に落とした。
「……はぁ、それで」
「村上の兄は有名でしてね。不良とでも言うんですか? とにかく素行が悪くて……悪影響でも受けたんでしょう。せめて学校でだけでも正しいことを教えるべきだと思いませんか」
グッと眉を寄せて、喉奥でつかえる言葉の代わりに拳を握った。
兄のことは嘘じゃない。
あたしの生活態度が悪いことは重々承知だし、問題児のレッテルを張りたいなら好きにすればいい。
だけど、あたしの口が悪いのも、すぐに手が出るのも、寝坊癖やサボり癖が治らないのも、大人が、教師が嫌いなのも、兄のせいじゃない。
あたしが問題児だと言われることに、兄は関係ない。
「まあ、母子家庭という点で大目に見てはいても……兄に続いて妹までとなると……ねぇ?」
――殴ってやる。そう思って顔を上げた時、鈍い音が廊下に響いた。
「とんだ下種だな」
気付けば目の前に立っていたはずの西郡は床に倒れていて、麗桜は右手をブラブラさせていた。
呆気に取られていると、西郡が殴られた左頬を押さえてよろめきながら立ち上がる。



