天然店員は俺様王子



あたしはすぐに逃げるのが妥当だと判断して、両手でしっかりゴミ箱を持った。


「すみませんでした」


素直に謝って、早々と西郡の横を通り過ぎようとした瞬間、肩を掴まれる。


「ブレザーはどうした」


ブレザーブレザーって……どうでも良くね!?とは口が裂けても言っちゃいけないってことは分かってる。


「着て来てない」


着てないんだからいいじゃん。そう目で訴えると、西郡節が炸裂し始めた。


「私は指定ブレザーを着て来いと言ったはずだぞ」

「……」


ホント、殴ってやろうか。その眼鏡、割られたい?


まだ衣替えの季節じゃないからブレザーは着用しなきゃダメだけどさ。よく見ろよ! あたし以外にもブレザー着てない奴いるだろ!


廊下の端っこで西郡と向き合うあたしは、徐々に苛立ちが募る。


「セーターも着てない上に、ワイシャツの裾を出しっぱなし。だらしないにもほどがあるぞ」


ああ……めんどくさくなってきた。


あたしは目を伏せて、赤いメッシュのエクステをひと撫でする。


「暑かったんですー」


嘘だけど。むしろ寒くて堪らないけど。