甘い声であたしの名前を呼んで、頬に触れたかと思うと顎を持ち上げられて、食い付かれるような麗桜のキス。
垣間見る麗桜の顔がやけに色っぽくて、あたしは動けなくなる。
髪に指を通されて、後頭部を押さえつけられるあの感触は、苦手だ。
何度も向きを変える麗桜のキスに、うまく息ができない。体中が熱を帯びて、力が抜けてく。
前は、あんなに優しいキスじゃなかった。変わらず少し乱暴だけど、何かが違う。
それは……あたしの麗桜に対する気持ちが前と変わったから? それとも、麗桜が……?
あたしの思考は授業を終えるチャイムに止められた。
「……」
まるまる1時間麗桜のことを考えていた現実に呆然としていると、前の席に座る透が立ち上がった。
「よーっし! お掃除するよーっ!!」
清掃時間に突入したことで、透はいつになく元気になる。
「瑠雨! ぼーっとしてないで掃除に行くよっ!!! はい奈々も行くよーっ!」
「勝手に行ってひとりで掃除してくれれば助かるのに」
無邪気な透の恋心を一瞬にして殲滅させる勢いの奈々。
あたしと奈々と透は3階の家庭科室の掃除担当で、あたし的には3年生がやればいいのにって感じなんだけど、喜ぶ透を見るとそんなことは言えなかった。
何と言っても3階には透の愛しい王子様、昴がいる。



