「ちぃ君だーっ!!!」

「あとで数学教えてーっ!!!」


移動教室から戻る廊下で、アイツへの黄色い声が響く。


「ふぉ~……さっすがちぃ君! -mia-を出ても人気だねぇ」


棒付きの飴を舐めながら隣の透が言うと、その隣にいた奈々がクスリと笑う。


「透の1番は変わらないくせに」

「ぐへへー。あたしの1番は一生昴だもーんっ!!!」

「ふふっ。だから?」

「奈々から振っといてその返しはおかしいと思います!!!」


相変わらずなふたりを横目で見ながら、ふとアイツ……麗桜に視線を移す。


頬を染める4人組の女の子に囲まれ、ダテ眼鏡の奥で嘘臭い笑顔を振り撒いていた。


「瑠雨? どしたのー?」


透の声にハッとして、「何でもない」と笑い返すと感じる奈々の視線。


「……何よ」

「ふふっ。別に?」


奈々は妖艶に微笑んで、髪を耳に掛ける。


「――村上っ」


心が読めないかと奈々を凝視していると、麗桜の声。視線を投げ掛ければ、数メートル先で手を上げている。