「……村上。いつになったら指定ブレザーを着るんだ? 制服くらいキチンと着たらどうなんだ」
西郡は眼鏡を押し上げ、瑠雨の白いブレザーを指差した。
……え。説教ですか? ここで? 今? それ今じゃなくちゃダメですかね?
俺の気持ちも虚しく、西郡は淡々と続ける。
「聞いてるのか村上っ! 生活態度もまだ良くないみたいだな。また留年の危機に晒されたいのか?」
瑠雨は相変わらず横目で西郡を見たかと思うと、思いきり面倒くさそうに溜め息をついた。
「うっせーよ」
バカ………。
瑠雨のあまりの正直さに俺は目を覆いたくなり、西郡は鋭い眼光を瑠雨に向ける。
「先生に向かって何だその態度は」
「ハイハイすみません」
「指定ブレザーを着てこいと言ってるだろう!」
「へぇへー」
「村上っ!!!」
あのー。俺気まずくね? 隣には怒りで震える一応上司みたいなもんの西郡。
目の前には好きな女だけど今は生徒で俺は一応先生側の立場。どーよこの板挟み状態。
「遅刻欠席も未だに多いし……はぁ……指導室に来い!」
はー!? 何言ってんだこの眼鏡! 瑠雨の放課後は俺のもん……。
「ウッッザい」
お前も言葉に気を付けろボケがぁぁぁああああ!!!



