「……何よ」
放課後、数学準備室。大量のプリントを2枚ずつホチキスで止めてる瑠雨を、俺は何もせずジーッと見ていた。
「何か用!? 見ないでくれる!?」
ウッセーな。癒やされ中なんだよボケが。
「黙って作業しろ」
「くっ……覚えてろよこの……呪ってやる。全てが終わったら呪ってやる……」
……呪われるのかよ、俺。
パチン、パチンと静寂な部屋にホチキスの音が響く。瑠雨の視線はプリント。俺の視線は瑠雨。
……あー……触れてぇ。
「――アンタやっぱり、変」
「……聞こえなかった~。今誰のこと言ったのぉ~?」
「……麗桜、変。戻ったけど、また何か違う」
そりゃあねぇ……。
心の枷っつーの? なくなりましたからね。
返答しない俺を、瑠雨は手を止めて見上げた。グレーの切れ長の瞳が、いやに心を揺さぶる。
「なあ……言うこと聞くんだろ? 俺の言うこと、何でも」
真面目な顔をして言うと、瑠雨は目を見開いて困ったように視線を泳がせた。



