「別に怒ってませんけど」

「その言い方が怒ってんじゃねぇかよ」

「うっさいな! アンタ何様なわけ!? 人が心配してやってんのにその態度っ! ハゲろ!!!」


振り向いてキレた瑠雨にポカンとしそうになった。


心配? 誰の? 俺の?


瑠雨は俺を睨んで、また背を向けるとプリントの山に手をかけた。


やべ……俺今絶対口緩んでるし。


口を手で覆うと、若干顔が火照るのを感じた。


そのまま俺に背を向けている瑠雨を見つめると、抱き締めたくなる。キスをしたい。好きだと言いたい。


そんな渇望に支配されたって、好きだとは言えねぇけど。



瑠雨の気持ちがキョウにある以上、手が出せない。迂闊に行動して嫌われるのはご免だ。


これ以上嫌われるのは困る……っても毎日虐めてっから制御なんか意味なさそうだけど。


だからこそ、心配なんかされたら調子に乗りそうになる。


「……………」


「瑠っ雨ーー!!!」


いきなり準備室のドアが勢い良く開かれ、同時に俺も伸ばし掛けた手を勢い良く上に上げた。