一言も喋らねぇってどーゆーことですか? あ、喋ったっけな……死ねって一言。
……俺、一応実習生だけど。先生の立場なんすけど。お前立場分かってる? 俺、先生。お前、生徒。どーよこれ。
そんな俺の心を感じるほど賢くはなさそうだけど、瑠雨はチラリと俺を見た。
「雑用なら何すればいいか早く言って下さいますかー」
「……何だその敬語っぽいのに妙に腹立たしい言い方は」
言うだけ言ってフンッと顔を逸らす瑠雨に口元が引くつく。
上等じゃねぇかコラ。そんなに雑用がやりてぇなら山ほど押し付けてやんよ!
「んじゃ早速。これ250枚コピー」
差し出したプリントは俺が研修授業をする時に配るもの。
それを「ハイハイ」と瑠雨は乱暴に奪い立ち上がる。それによって雑用をひとつ追加してやる。
「コピー終わったら、ミルクティー買ってこいわ。午後ティーのロイヤル以外受け付けません」
「うちの学校に午後ティーのロイヤルはありませーん」
「知ってますー」
勢い良く振り向いて今にも俺に噛み付きそうな瑠雨に、首を傾げた。
「近くのコンビニに行けばあるでしょっ?」
瑠雨はヒクッと口を釣り上げ、無理やり笑顔を作る。
「喜んでぇ~」
それだけ言うと荒々しく準備室を出て行った。
……俺どんだけ? いやー、でも仕方なくね? 苛めたくなるんだからよ。
そう仕向ける瑠雨が悪いと俺は思います。



