渇望、切望、熱望。
喉から手が出るほど欲しいと望んでるモノ。
そんなもん山ほどあるけど、俺が今1番欲しいモノはいつまでたっても反抗的で、憎たらしくて跪かせたくて仕方ない野良猫――村上 瑠雨。
「おっせーよ。タコ」
放課後の数学準備室でダラダラしていると、ドアが開く音がして声を掛けた。振り返らなくても分かる。
「……シネ」
小声でも聞こえてんだよ!!!
振り返れば案の定不機嫌な顔した瑠雨が立っていた。
「ドア閉めろよ」
「……ハイハイ」
「こっち来い」
「…………」
何だ。やけに素直じゃねぇか。
……つか遠くね? 何、半径2メートルは近付きたくねぇって顔してんの?
そんなの許されねぇから。
「こーこ」
ひとつだけある机に付属してる椅子に座る俺の隣には、生徒用の木製の椅子があった。その椅子の背もたれを叩く。
「座れよ」
瑠雨はその椅子を見てから、渋々と気怠そうに座った。無論、俺を見ようともしない。



