「ダメだよ、食べなきゃ」
「……食欲、ない。起きたばっかで」
キョウの前で千草麗桜の名前は出したくなくて、軽く嘘をついた。
「瑠雨少食だもんねー……俺の蕎麦でいいならあげようか? まだ少し残ってるし」
キョウの……蕎麦!? そんなん食べたら鼻血出る自信がある!
「いやいや! 大丈夫だよ!!! ほんとに食欲ないからっ」
「ちょっとくらい食べな。これ以上細くなってどうすんの」
「……っ」
キョウの白い手の甲が軽く頬に触れて、そこから熱が広がっていった。
「おいで」
先に2、3歩進んでいたキョウが振り向いて微笑む。
キュッと胸が締め付けられたのは、気のせいじゃない。
火照った顔を隠すように、少し俯いてキョウのあとに着いて行った。
細いとか言われた……心配された上に頬に触れられたよ!
しかも、おいでとか! 行きますよ!!!
きっとあたし、ここが学食じゃなくてひとりだったら、確実に飛び跳ねて喜んでた。
ああやっぱりあたし……キョウが好きなんだ。



