天然店員は俺様王子



「んじゃね」

「昼には戻ってきなさいよ」


奈々の言葉に歩み出した足を止めて、少し考えてから顔だけ振り返らせた。


「気が向いたら」

「来なきゃダメぇ!!!」

「ハイハイ」


「絶対だからねー!」と叫ぶ透の声を背に、教室を出て立ち入り禁止の屋上へ向かう。


あたしの手の中でチャラチャラと弄ばれる鍵は、透が屋上の鍵を拝借して作ったらしい合い鍵。


そんなことを入学式に平然とやってのけた透は思ってた以上に問題児だけれど、サボる時は専ら屋上が使えるから感謝する他ない。



「っあー!!!」


屋上に入り空を見上げると、教室で見たよりも広い青空に腕を伸ばす。


誰もいない秘密の場所に寝転ぶと、ちょうどチャイムが鳴り響いた。


極楽……。
生徒の皆様、かったるい授業をぜひ頑張って下さいませ。


ポカポカと暖かい陽気に瞼を閉じかけた時、ピーッと笛の音が聞こえて我に返る。


……校庭から?


起き上がってフェンスに近付き、下に見える校庭を覗いた。


「あ……」


キョウのクラスじゃん!