天然店員は俺様王子



助けてもらったことに感謝してないわけじゃないのに……。


いや、助けてもらったことを差し引いても、やっぱ性格悪いとは思うんだけど。


むしろあたしの理解の範疇を超えているからかもしれないけど、いまいちハッキリしない千草麗桜を目の前にすると、何を考えてるんだろうって思う。


あの日垣間見えてしまった優しさが余計に目立って、忘れられなくて、身動きが取れなくなる。


調子が狂う。


……狂わされているのだとしたら、やっぱり千草麗桜は性格が悪いってだけの話だけれど。




「あ。戻ってきた」


教室に入ると、あたしを見つけた透が無邪気に笑い掛けてきた。


「あら、少し顔色悪いわね。また何かされたんでしょう」


小さい透を抱きしめて癒されていたというのに、奈々の一言で一気に冷や汗が出る。


「何が? 別に、何も、されてないし」

「やぁねぇ瑠雨ったら。私に分からないことがあると思って?」


お嬢様らしくクスクスと妖艶に微笑む奈々もとい大魔王から逃れられるはずもなく、溜め息をついた。


「別に……放課後来いって言われただけ」

「ふぅん? すっかりレオの虜ねぇ」


奈々の言葉に耳を疑う。


「虜って……え!? 瑠雨ってちぃ君のこと……!」

「有り得ないから!!!」


間髪いれず透の言葉を遮ると、「あら、違うの?」なんて奈々まで驚いたように言う。