――変態! 変態! 何がお仕置きだよ!!!
髪触るとかっ耳に息吹きかけるとかっバカじゃないの!? 意味が分からない!
大股で歩いていたあたしはふと目に映った手洗い場の鏡の前で立ち止まる。
鏡に映る、隠すように耳を押さえた自分の姿。
眉を寄せて、頬が紅潮してる。動悸が治まらない。
「……何なのよ……アイツ」
こんなあたし、見たことない。
いちいち反応する自分なんか、見たくない。
アイツは俺様で自己中でナルシーで冷酷で悪魔で鬼畜で、唇舐めたりキスしてくるただの変態野郎なのに。
「……あたし、バカじゃん」
多分、憎みきれてない。
アイツに助けられた日、余裕綽綽で図体のデカい男4人をなぎ倒してたけど、あたしを車に押し込めるまで必死な顔をしてたのを知ってる。
家に着れていかれて、ミルクティーとかスウェットとか何も言ってないのに差し出してくれて。
作った酢豚だって黙々と食べてたけど、全部食べてくれた。
寝る場所だって、あたしは床でも良かったのにロフト使わされて、悪戯とか嫌味は腹立ったけど、家まで送ることを当たり前のようにしてくれた。
「……訳わかんない」



