全体的にカジュアルな服装。黒縁の眼鏡が笑える。


教壇に立っていたのは天敵、千草 麗桜。


――の、はずがない。


見えない見えない。知らない知らない。


悪戯な笑みを一瞬見せた見知らぬ男からゆっくりと視線を窓の外に移して席に座る。


記憶を改ざんしましょう。あたしの立派な脳みそよ。



「おっはよーう!!!」


ガラッとドアが開く音がして、窓の外を見てたあたしは声だけで誰だか分かる。


あたしの前の席が、空席。


「向井ぃぃい! お前も遅刻しすぎだ!!!」

「寝坊したんだもっ……」


ああ……言うな透!!!

お願いだから口を閉じろ! 思考を遮断しろ! 今こそ悟りを開く時!


「ちぃ君んんんんん!? は!? ちょ、本物!? 何でウチのクラスにちぃ君がいるの!?」


……聞こえない、聞こえない。


お願いだから透、ソイツがいるのを認めるんじゃねぇ!!!


「何だお前ら、知り合いか?」


担任が驚いたように口を開き、チラリと教壇を見ると透が千草麗桜……に、とてもよく似た人物に駆け寄っているところだった。


「ホントにちぃ君?」


一生懸命顔を覗く透を見下ろして、千草麗桜のそっくりさんは透の頭を撫でる。