「送ってくれてありがとう」

「どういたしまして」


あたしの家の前にキョウがいるなんて……ちょっとドキドキする。


ヤバい。なんかあたしテンション高すぎる。だって好きだって気付いたら、無性に嬉しいというか……。


「じゃあまた明日」

「うんっ! また明日ね」


ニコリと笑って帰っていくキョウの背中を、見えなくなるまで見つめていた。


見送るとかあたし、超乙女っぽくない? ちょっと可愛いんじゃない? 恋してますって感じ?


ちょ、にやける!!!


これは、透と奈々に言うべきなのか。まあアイツにバレてるくらいだから、透は置いといて奈々にはバレてそうだけど……。


……それよりも。


舞い上がってるけど、キョウはあたしのこと何とも思ってないってさっき分かったばっかりじゃん。


それに悲しくなって好きだとか気付くあたし。


「……どんだけバカ?」


しかも若干、失恋した気分、だけど……好き、だし……諦めなくていいんだよね?


好きでいて、いいんだよね?


ポポッと頬が熱くなって、慌てて両頬を手で包んだ。


面倒な学校が楽しみになってくるなんて、恋ってすごいかもしれない。



あたしは明日が待ち遠しくなって、弾む足で家の中へ入った。


明日はキョウに可愛いって言ってもらえるように、早起きしてメイクもヘアセットもちゃんとやろう。


ひとりでウキウキしながら明日の格好を考えるあたしは、芽生えたばかりの恋にただ浮かれていた。



自分の身に、冷酷な悪魔の制裁が下されるとは知らずに。