「…………ラブ?」


立ち止まったあたしに気付いたキョウが振り返る。


「瑠雨? どうしたの?」

「――……」

「……大丈夫?」


不思議そうに首を傾げるキョウに、口が勝手に動いた。


「……大丈夫じゃない」

「ぶはっ! いや、ふっ……まさかそう返ってくるとは……くくっ……何で? どうしたの?」


吹き出して、言い訳して、また笑って、会話を続けるキョウに、無性に愛しさが込み上げる。


同時に、思い出したくもないけど千草麗桜が言ってた言葉を振り返ってしまった。


“キョウが好きなんだろ”
“見てりゃ分かる”


――好き!? あたしが恋!? 

嘘でしょ!


だってキョウは優しくて、よく笑って、いい先輩だなって……素敵な男とはキョウのことだとも思ってたけど!


王子っていうのはあんな変態野郎じゃなくて……。


「瑠雨、本当に大丈夫?」


キョウのほうが何倍も、何億倍も、王子……。


「だっ大丈夫! 全く本当に問題ない!!!」

「ははっ! そう? ならいいけど」


キョウが王子で、何も問題ないじゃん。


……うん。
あたしの王子は、キョウ。