天然店員は俺様王子



「………キョウ」


震える唇で名前を口にすると、ジワリと目の奥が熱くなる。


立ち止まってあたしを見てるキョウから、思わず顔を背けて俯いてしまった。


「……見られちゃったね? 大好きな先輩に」


――本当にコイツ、消えてほしい。


「もっかいしとく? キス」


ゆらりと顔を上げて千草麗桜を睨むと、不満そうな顔が見えた。


「……泣くほど嫌かよ」


誰がアンタに泣かされるか。キョウに見られたから、キョウにきっと誤解されたから、涙が出たんだよ。


だけどあたしはこのまま逃げるほど、柔な女じゃない。



「…………ばれ」

「あ? なんつった?」


聞き返してきた千草麗桜の胸ぐらを力任せに掴む。


「歯ぁ食いしばれ!!!」


叫ぶと同時に千草麗桜の端正な顔目掛けて拳を振るった。


左斜めに吹っ飛んだ千草麗桜を見下ろし、あたしは拳の痛みを飛ばすように右手を振り払う。


「死ね変態!!!!」


「――ってぇ~……」


立ち上がった変態を睨むと、口の端が切れて血が滲んでいた。