「うん。えと、ありがと」
『ふは! それは着いてから言ってほしいかな。――じゃあ、すぐ着くから』
「だ、だよねっ! じゃあまたっ」
電話が切れるまでクスクス笑っていたキョウの声が耳に残って、ギュッと携帯を握る。
……キョウ優しい! さすが紳士! ていうかあたしの神様!
あーもーヤバい。顔がニヤけ……。
「キョウからだろ」
……忘れてた。
ゆっくり振り向いて未だ掴まれたままの右手を見下ろす。
「いい加減離してくんない? あたし帰るから」
「キョウとデートですか。ふっ」
「送ってくれんの! もうマジで離せっつーの!!!」
「なんだよ。鏡見て化粧でも直したいわけ?」
カッと顔を赤くさせると、千草麗桜は「図星」なんてバカにしたような笑顔を見せる。
全部見透かしたような瞳に、ムカつくことしか言わない唇。
あたし、ほんとに嫌い。コイツのこと。
「好きなんだろ? キョウのこと」
「だからそんなんじゃないって言ってんじゃん! まあアンタよりはよっっっぽどキョウのほうがいい男だとは思うけどね!」
コイツが王子だと騒がれること自体理解出来ない!
キョウのほうが何倍も、何億倍も王子!
「あたしアンタのこと大っ嫌い!!!」
そう叫ぶと、長い間掴まれていた右手が解放された。



