「――っ! 離せ! 電話!!!」
「そのまま出れば」
「~~っほんとムカつく!!!」
掴まれていない左手でブレザーのポケットから携帯を取り出し、覚束ない指先で操作する。
「もしもし!」
『あ、瑠雨? 俺』
着信音の通り、電話を掛けてきたのはキョウだった。掴まれたままの右手を後ろに、あたしは千草麗桜に背中を向ける。
「ど、どうしたの」
『瑠雨、店長に連れてかれたでしょ? 奈々が嬉しそうにしてたから、何かマズいことになってるのかと思って。今どこ?』
ヤバい……優しすぎる。それから奈々……アンタ本当に酷すぎる……。
「今……-mia-出たばっかり」
『え!? 本当に!? もう10時過ぎて……あーでも、ちょうど良かったな』
「……何が?」
『ああ俺ね、奈々たちと別れたあとバイト先行ってて。今駅なんだけど、瑠雨がまだ-mia-にいたら送らなきゃなーと思って電話したんだよ。夜だし、危ないでしょ?』
神様……これは夢ですか?
普段のあたしならキョウに迷惑かけたくなくて、100%断ってる。
でも今、この最悪な状況の中断るなんて有り得ません。むしろ出来ません。
「ごめん。あの、頼んでもいい、か、な……」
ってあたし声ちっちゃ!
『ぶふっ!!! いや……あははっ! ゴメン。今向かってるから、もう少し待っててね』
笑われたし……。



