天然店員は俺様王子



「帰れば? ……ほら。お得意の力業で振りほどけんだろ?」


悪戯に笑う千草麗桜のゴツゴツした手が、あたしの右手首を掴んで離さない。


どんなに力を入れて振り払おうとも、呆気なく敗れてしまう。


「帰んねぇの? ……ああ、帰りたくねぇんだよな?」


フッと鼻で笑って顔を近付けてきた千草麗桜に、思わず顔を逸らす。


……ムカつく。ムカつくムカつく!!!


力の差を見せ付けられて、まるでホールで殴ろうとしたあたしへの当て付けみたいに。


お前に勝ち目はないって言われてるみたい。


「オッサン」


俯くあたしの頭上からやたら耳に残る声。


「な……なぁに?」

「口滑らしただろ」

「え!? そそそんなヘマするわけないじゃ……嫌わないでぇえええ!!!」

「くたばれオッサン。じゃあ俺もう上がるから」


グンッと手首を引かれて反射的に顔を上げた。


あたしの意思はお構いなしに、スタスタ歩く千草麗桜……は、後ろで「レォオオ!!!」と叫ぶオッサンすら無視。


「……ちょっと! 離せ! どこ連れてく……っ!?」


突然、ロッカーやテーブルやソファーがある部屋に押し込まれ、あたしはソファーに倒れこんだ。