俺の声にぐっと言葉に詰まったような顔をしてから、口をへの字にした。


「あんたが悪いんでしょう……! 変態のくせに私に触らないでよ! 気持ち悪い気持ち悪い!」

「なんで変態になるんだよ!」

「マネージャーが好きだったくせに、告白されたらへらへらして、だれでもいいんでしょ!? みんなにいい顔して、ただのスケベじゃない!」


なんじゃそら。
なんでそんなこと言われねえといけねえんだ。


「なんでそこで先輩が出てくるんだよ。バカかお前、いつの話だ」

「とぼけちゃって! 振られたくせに! なに? もしかしてまだ未練?」

「そんなこと言ったらお前だってだろうが!! 悠斗前にしておとなしくすましやがって。振られたくせに未練たらたらだったくせに。一緒に遊びに行けるほどの仲になってよかったじゃねーか! だったらもう俺にかまうんじゃねーよ!」

「なんであんたにそんなこと言われなくちゃいけないのよ!」

「好きな男の前で必死に猫かぶって振られないように頑張れよ。無理だと思うけど」

「もーあんたの顔なんか見たくない!」

「俺もお前なんか見たくねえよ!」


俺が止めたのも忘れて、美咲はひょいっと屋根を乗り越えた。
そして俺を振り返り、ぎゅっと唇を噛んでいる。

そして、涙をボロボロとこぼし始めて、それを隠すように拭いながら自分の部屋に入っていった。


……なんで、こんなことになったんだか。


美咲の泣き顔に、自分が悪かったような気がしてきてしまう。
殴られたのは俺だっていうのに……。なんで泣くんだよバカじゃねえの。

っていうかなにしに来たんだよほんとに。


くしゃりと自分の髪の毛を掴んで、ずるずると腰を下ろした。

……あそこまで、言うつもりじゃ、なかったんだけど。
気がついたらペラペラ叫んでしまった。
殴られたことに関してムカつく気持ちもあるけど、俺も……言い過ぎた、のかもしれない。

気が強いくせにすぐなくなんてずりいだろ、あいつ。


「なにやってんだ、俺」


はあーっとため息を落として頭をくしゃくしゃとかきむしる。

視界には、名前も知らない女からもらった誕生日プレゼント。
なにが誕生日だ。なにがめでたいんだ。

最悪の、誕生日だ。