「結局、巽のほしいものってなに?」

「くれねえくせになんなんだよ……」


ヤケにしつこく聞いてくる明宏が気持ち悪い。
なんなんだ。もしかして今日の誕生日に彼女からもらうプレゼントでも考えてんのか?

めんどくせえ男だなあ。


「まあ、色々あるよ。新しいバッシュも欲しいし、CDも欲しいし、もっと言えばアンプもギターも欲しいな」

「CDはともかくほかは却下だな」

「なんだよ却下って。お前が聞いてきたんだろうが」


まあまあ、と俺の肩に手をおいて明宏が笑った。

ほんと意味がわかんねえ男だな。脳みそお花畑にでもなってんじゃねえの。

とりあえずふたりして着替えてから体育館を後にする。
校門近くで彼女が待っているんだと今にもスキップしそうな明宏の隣を呆れた顔で歩く。


「……ん?」

「どうした、巽」


なんとなく横を見ると、離れた場所で美咲と悠斗が待ち合わせしていたか、手を上げて近づく姿が見えた。

なにしてんのあいつら。


「なんだよ、あ、美咲ちゃんと悠斗か。おー……」

「呼ぶなバカ」


声をかけようとした明宏を慌てて止める。


「なんで?」

「めんどくせえだろ。……っていうか、あいつら一緒に帰ってんの?」

「ああ……なんか今日は用事があるとか」


ふーん。
思わず“なんの?”と聞いてしまいそうになったけれど、なにも言わずに校門に向かう。

今日だけなんだろうか。俺が知らないだけで、たまに一緒に帰ってたりすんのかな。どうでもいいけど、なんか、知らなかったことに苛立ちが募る。

明宏も知ってるような口ぶりだったし。
悠斗も今までそんなこと一度も言わなかったじゃねえか。

もしかして、美咲はまだ悠斗のこと好きなのか?
……諦めの悪い女だな。
悠斗も、物好きだ。