「……もういい」


あーもうムカつく。当初の予定もどうでもよくなった。
やっぱり来なきゃよかった。
なんでこんなことしようと思ったんだろう、私。


「帰る」

「ちょ……! どっから帰るつもりだ窓から帰んなバカ! どんくせーんだからあぶねーだろ!」

「うるっさい! 来たんだから帰れるわよ! あんたの運動神経と一緒にしないでよ!」

「てめ……さっき落ちかけた癖によくそんなこと言えるな、もう忘れたのかよ単細胞か」

「あんたが窓なんか開けるからでしょ!」


巽の言葉を無視して、屋根を伝って自分の部屋の窓に入る。
その間巽はずっとなにかを叫んでいた。叫ばれる方が気が散って仕方ないってーの。


手にしていたものに気がついて、またむかついてくる。
あーもうほんっとバカみたい!

そう思って手に持ってたチョコを巽に思い切り投げつけた。


「ぶっ……!?」


運がいいことに顔面に直撃して巽は顔を押さえる。


「な、にすんだ」

「死ね! それ食って死ね!」

「死ぬか! ぼけ!」


巽の叫びを聞かずにぴしゃりと窓を閉めて再びカーテンを閉める。


なによ……! せっかく私から行ったのに! 『ありがとう』って言おうと思ったのに! ちょっとは仲よくしようとそう思ったのに。

できるんじゃないかなって……思ったのに!