「……なんだよ」


悠斗がいなくなったのに、家の前にいる美咲。
俺もなぜか動けなくて、ふたり無言で目を合わせた。


「……にやにやして、バカじゃないの?」


いつもの雰囲気で俺に悪態をつく美咲の声。
文句を言ってすぐに目をそらすくせに、家の中に入ろうとはしなかった。


「お前に関係ねえだろ。っていうかお前こそ悠斗とふたりで出かけて、浮かれてるんじゃねえの? いつものブス顔がもっとブス」

「な、あんたに関係ないでしょ」

「クラブ終わってからずーっと一緒だったんだろ? よかったじゃねえか。なに? 楽しかったわけ?」

「うっるさいなあ! ちょっとファーストフードで話してただけだし」

「へーお前みたいなのとなに話すの? 話できんの? 口の悪い女が」


ペラペラとバカにすると、美咲が珍しく口を閉ざし始める。
今にも泣き出しそうな顔をして俺を思い切り睨む。

……なんだよ。


「あんたのせいよ。あんたが悪いのよ」

「はあ?」

「どーせ、私と悠斗くんの会話なんてあんたのことばっかりよ! 聞きたくもないのに。こんなときまで邪魔しないでよ!」

「俺のせいじゃねえだろ!」

「うるさいチビ! なにあの人。デレデレデレデレして、きっしょくわるい!」

「うるせえな……おまえこそ猫かぶっててかっこわりーんだよ」


言った瞬間美咲は俺をものすごい目つきで睨んできた。
俺が悪いのかよ!?

先にケンカ売ってきたのはお前だろうが!


「あんなきれいな人に相手にされるわけないのに。なにあの顔。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い」


なんでてめえにそんなことを言われるんだよ。