小学校からずっと一緒だとこいうのに気づきやすくてめんどくせ。
っていうか中学になってからやたらとそういう話が多くてすげえ嫌だ。どうでもいいっつーの。

どいつもこいつも色づきやがって。
あのバカ女もだ。


「あれ? 巽に明宏ー。クラブ?」


ポカリを飲むと、悠斗の声が聞こえてきて視線を向ける。
剣道の荷物を持った悠斗が涼しげに歩いていた。この糞暑いのに、袴って。おかしいだろ。

運動場走らされるのもうんざりだけど、剣道部よりマシだな、と悠斗を見る度に思う。

男の俺が言うのもなんだけど、こいつは爽やかだと思う。
だからこそ、あのバカな美咲は浮かれてるんだろうけど。


中学で同じ学校になり同じクラスになった悠斗。

こいつは美咲に“かわいい”なんていう男だ。それを素で口にできるんだから、すげえとしか言いようがない。初対面であの騒がしく口の悪い女を間近で見てそう言えるなんておかしいと思う。


「あ。美咲ちゃん」


……ほんっと、迷惑なことしてくれたよなあ。

悠斗が体育館から休憩に出てきたんだろう美咲に声をかける。
あいつが照れくさそうに手をふって、その後に俺を睨んだ。

マジであいつ、女かよ。なに睨んでんだあいつ。

悠斗に“かわいい”ってお世辞を言われて浮かれてるんだ。ブスだけに、言われ慣れてないからなあいつは。真に受けて、多分、悠斗を好きにでもなっているんだろう。


わー気持ち悪い。
あの女が! 女でもない女が!


「ほんと仲いいなあ、巽と美咲ちゃん」

「どこがだよ!」


脳天気に笑う悠斗に思わず突っ込んだ。


「家も隣で、教室も隣。クラブもとなりで、常に一緒じゃん」

「あいつが俺の周りに寄ってくるんだよ」


そう言うと爽やかに笑う。
なにがおかしいんだこのやろう。