「バカだなあ、私」
あの日から……一度も渡せないままだっていうのに、なんで毎年買ってしまうんだろう。お金の無駄遣いもいいところだ。
ずっとずっと悩んでいた答えは、ここに、ずっとあったのかもしれない。
クローゼットの奥に仕舞いこんで、見ないようにしていただけだったのかもしれない。
1つずつ取り出して、並べる。
明日から旅行だ。大樹くんと。思い切り楽しんでこよう。
……そして、帰ってきたら、これを捨てよう。
きっと、捨てられるはずだ。
もう終わりにしなきゃいけない。いい加減にしなくちゃ。
大樹くんと向き合うって、決めたんだから。大樹くんと、一緒にいたいって思ったんだから。
大丈夫。きっとまた、嫌いになれる。
だって今まで大嫌いだったんだから。
あんな、最低で、無神経で、バカで、鈍感で、愛想もない口の悪い男。
いいとこなんて、ないんだから。
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「いってきまーす」
「由美子ちゃんによろしくね」
朝早くに出かけようとして、お母さんの台詞に胸が傷んだ。
……やっぱり、嘘をつくってなんか、罪悪感がすごい……。なんだかバレてるんじゃないかと思えてきちゃうんだけど。
なんだか無駄にカバンに詰め込み過ぎたみたいで、荷物が重い。
それを悟られないように平気な顔をして玄関を出た。
駅まで歩くの、ちょっとしんどいなあ、さすがに。
やっぱり荷物減らすべきだったかもしれない。
そんなことを考えて門を出ると、壁にもたれかかっている人影が見えて、思わず脚が、止まった。