「うわ、なにその顔」


朝、リビングで顔を合わせた渚に、開口一番そう言われた。
鏡をまだ見てないけれど、自分がひどい顔をしていることはわかっている。

多分、虚ろだろう。寝ていない上に、ずっと後悔して悩んでいたからな。


「昨日何時に帰ってきたの?」

「……どうでもいいだろ」


今はその話を1番したくねえんだよ。
渚と目を合わさずそう言って洗面所に向かう。通り過ぎる途中に渚が「機嫌悪ー」とつぶやいていたけれど、それは無視する。

今はだれとも話したくねえ。

そんな俺の気持ちを察したのか、渚はそれ以上俺に話しかけては来なかった。


八つ当たりだってことはわかっている。
それでも、消化できない自分への怒りで頭がいっぱいなんだ。


学校に着いてからも、ひとりでずっと机の上で寝ているふりをしながら過ごした。
……だからって、明宏が大樹が話しかけてこない、なんてことはないんだけれど。


なんで俺は3年になってもこいつらと同じクラスなんだろう。
じゃなきゃもう少し……違う行動ができてたんじゃねえのかな。


「旅行先のプランこれでいいと思うか?」

「しらねえよ、巽に聞けば?」


……こうやって余計な情報が入ってくるんだから。
旅行とかどうでもいいっつーの。知るかよ! そもそもお前が美咲と旅行するとか、付き合ったとか告白するとか言うから悪いんだ!


「うるっせえよ」

「なんだよ機嫌わりいなあー。なに? 沙知絵ちゃんとケンカでもしたのか?」

「してねえよ」


明宏はいつものことだ、と言いたげに適当にあしらってくる。