部屋に入るなり、すぐに自分のベッドの布団を蹴りあげた。

……なに、を、やってるんだ俺は!

自分のしたことが信じられない。だけど……だけど。
やってしまった自分の行動に、自分で苛立つ。バカすぎて最悪だ。

あんなことを、するつもりなんて、なかったのに!


こんなことになるのなら……あのまま隆太とリビングで寝続ければよかった。

同じ屋根の下に美咲がいるんだと思うと、眠気なんてどっかに飛んでいってしまって……どうしようもなくなったから、ただ、帰ろうと思っただけ。

心の中に、“会いたい”って気持ちがなかった、なんてことはない。
……ひと目だけでも、見たいと思ったのは事実だ。


だけど、あんなことをする気はなかった。

あんなふうに、泣かせたかったわけじゃなかった。


こんなことなら、眠れなくて徹夜でゲームでもしておけばよかった。

結局我慢ができずに美咲の部屋に行き、俺を気にしない美咲に……大樹との旅行に浮かれる美咲に勝手に苛立って、本能のままに、美咲を傷つけた。


「なん、で、泣かせるんだよ、俺は」


ベッドに顔をうずめて、絞りだすような声でつぶやく。

泣かせたいわけじゃないのに。傷つけたいわけじゃないのに。
俺の行動はいつも、同じことを繰り返すんだ。

わかっているのに……もういやってくらいに気づいているのに、だからこそ、俺は……沙知絵のことを受け入れたはずなのに。


美咲を見れば一瞬でそんなの吹き飛んで、ばかみたいなことばっかりするんだ。
もう忘れたいのに、もう諦めたいのに。

一体、いつになったら楽になれんだよ。


部屋の片隅にあるボロボロになった段ボールが目に入る。

……意味もなく、無駄に増えていく中身。
見るものバカらしいのに、捨てられないまま。

渡せるはずもないのに。


「……死にてえ……」


自分のバカさが嫌になって呟いた。
何回バカを繰り返せば俺は気が済むんだよ。いい加減学習しろよ。

自分がこんなに女々しくて、諦めが悪くて、最低な男だったなんて思ってなかった。