「美咲は、応援してくれる? もしも……」


もしも? もしも……応援できなかったら、沙知絵は、どうするの?


「巽くんのこと、好きだったら」

「そんな、わけない」


ふるふると頭を左右に振って、否定する。
好きかどうか、正直よくわからない。それに……沙知絵を応援できるかも、わからない。

だけど、こんな気持ちの私のために、もしも、沙知絵が自分の気持ちにフタをして苦しむのは、嫌だ。
そんなの、しんどいでしょ。
すごく辛い。

……今の、私みたいに。

好きとか嫌いとか、そんな簡単に言葉にできるような気持ちじゃないんだ。多分、今この世にある言葉では、言い表せない。
できるならとっくに、私だって自分の気持ちを受け入れられたはず。


「じゃあ……応援、してくれる?」


私の様子を伺うような沙知絵に、曖昧に笑って見せた。
多分、すごく変な顔をしていたんじゃないかな。


今、素直に言葉にできる私だったら、巽との関係も、今みたいになっていなかったかもしれない。もしかしたら、笑ってふざけあえるような、友人にはなれたかもしれない。


今更、だけどね。


「美咲……大丈夫なの?」


お手洗いに行こうと席をたつと、私も、と一緒に由美子がついてきて、ふたりきりになって心配そうに私の顔を覗きこんできた。


「もう、元気だよ」

「……そういう意味じゃないって、気づいているくせに。ほんと、意地っ張り」

「……だって、もう、仕方ないし。関係ないし」


もしかしたら、久々に会ったから、私のしらない巽だったから、気にしてしまっているだけかもしれない。

これからまた、離れていたらきっと、元に戻るんだよ。
そうしなくちゃいけないんだよ、私たちは。


でも。

また巽と離れて、顔を見ない日々を過ごしたとき。
偶然でも巽と会ってしまったとき、私は……また泣くかも知れない。


ううん、きっと、泣く。

そのときになったら、自分の気持ちをもっと素直に、もっと正確に、受け入れることができるのかもしれない。

だけど、きっともう、そのときは……手遅れになっているだろう。