「っていうか見てわかるでしょ? ショートカットの女の子見るの初めてなの? バカなの?」
「うっせーな! クソババア!」
「バカになに言われても痛くも痒くもないわよ」
「巽! いい加減にしなさい!」
いい加減にして欲しいのは俺の方だよ!
すぐ渚の味方ばっかりしやがって!
「男みたいにでけえし、かわいくねえし男にしか見えねえよあんな奴」
「あんたが小さいだけでしょ」
「あーもう渚黙れよ!」
「呼び捨てにすんなっつってんだろクソガキ!」
「いい加減にしなさいっ!」
おかんの大声に、さすがの渚も口を閉じた。
最悪だ、マジで最悪だ。なんなんだよ一体。こんなことなら遊びにでも行けばよかった。
あーもうむしゃくしゃする!!
さっさとご飯を食べ終えて、いつもならゲームをするところなのに自分の部屋に戻った。
あのクソババアの渚の顔見てられねえ。
部屋のドアをバタンと閉じて、ベッドにごろんと寝転がる。
あの美咲とかいう男女、隣に引っ越してきたんだっけ。ってことは同じ学校じゃねえか。学校が始まったら顔を合わすことになるんだろ。最悪だ。
あんな男みたいな女って好きじゃねえ。
渚みたいに気の強い女も嫌いだし、手を出す女なんてもっと嫌いだ。しかも口も悪い。
——コンコン
と、ドアをノックされて顔を上げると、いつの間にかドアを開けて中に入ってきていた渚が俺を見ていた。
「んだよ」
「あんたほんとに、ちゃんと謝りなよ」
「なんでだよ」
「泣いてたよ、多分。友達もいない場所に引っ越してきて、不安でいっぱいだっていうのに、あんなこと言われて。頭の悪いあんたでも、想像できるでしょ?」
……そう、言われたら、わからないでもねえ。けど。
頭の悪いってなんだよ!