「嫌いよ、あんたなんて……」


俺も、お前のことなんて嫌いだ。


「関わらないでよこれ以上……関わるたびに、私を傷つけて楽しいの?」


俺が傷つけたから、泣いてるのか。
さっきの涙とは別の意味なら、なんかもう、いいかっていう気分になる。

やっぱ俺、今日は頭おかしいんだろうな。


「出てって!」

「言われなくても出て行くよ」

「二度と来ないで!」

「頼まれたってもうこねえよ」


俺をぐいっと外に押しやって、俺はそれに逆らうことなくすぐに出て自分の部屋に戻った。

自分の部屋に入ったときはもう既に、美咲の部屋の窓は閉められていて、美咲の怒った顔も、涙も、見えることはなかった。

ポケットに入れたままになっていたことに気がついて、舌打ちをしながらベッドにダイブすように寝っ転がる。

……バカは俺だ。

なにやってんだ。
なにしに行ったのかもわかんねーし、結果なんかわけのわかんねーことして、キスなんかして泣かせて……。

そもそも始めっからおかしかったんだ。
渚に頼んでまで、バカじゃねえの俺。

自分で自分がわからない。
イライラしてるし、なにかに、ショックを受けてるし、そして罪悪感も、ある。

美咲の泣き顔と、唇に滲んだ血。


「くっそ……」


目をつむっていても、浮かんできて消えてくれない。



美咲が女子校に進学することになったと渚から聞いたのは、秋になった頃だった。
そして、窓を開けることのないまま、美咲と一言も言葉をかわさないまま、中学の卒業式を向かえた。

同じ学校に通うことのなくなった俺達は、高校に入ってしまうと今までなにしてたんだってくらい、顔を合わすこともなくなった。