「好きでもないのに、好意を寄せられたら簡単についていくようなバカをするからそうなるんだよ、お前のせいじゃねえか、バカじゃねーの?」
 
「そんなつもりで行ったわけでもないわよ! 無理やり……!」


知るかよそんなこと。
なんだよ無理矢理って。俺相手にはズケズケ言うくせに。その調子で嫌なら言葉にすりゃあいいんだ。


「いやなら断ればいいじゃねえか、相手のせいにしてんじゃねえよ。バカな男にひっかかるお前がバカなんだよ。好きでもない男にキスされそうになってショックだって? バカじゃねえの。お前なんかにキスする男なんてもう二度と現れねえっつーの。っていうか気のせいだろバカだバカ。お前なんか好きになる男なんていたら、そいつ頭おかしいんだよ」

「あんたよりマシよ! あんたみたいな男よりよっぽどましよ! 大輔くんは」

「だったらなんで泣いてるんだよ!」

「キスされそうになったのに、できなかった自分に泣いてるのよ!」


はあ? なに言ってんだこのバカ。


「せっかく素敵な人にキスされそうになったのに、パニックになった自分が悔しいだけよ! キスしたかったのに!」


あーそう。
あっそう。
あああああそうですか!


「だったら練習すりゃあいいんじゃねえの?」


美咲があまりに必死で叫ぶから。
なんでだか俺の頭が真っ白になって、気がついたら……。

美咲にキスをしていた。

美咲の腕を掴んで、頭を自分に引き寄せて、自分の唇を美咲の唇に押し付けていた。

唇に触れるぬくもりで、自分が今、なにをしているのか、やっと理解できた。
……なんで、俺、こんなことしてんだ?

力がふっと抜けていくと同時に、美咲が俺からゆっくりと離れていく。
目を大きく見開いて、呆然と俺を見る。


「……な……」


なにをした?
俺は今なにをした!?