「ちなみに場所は? 相手の名前も聞いていいかい?」



溜め息混じりにお味噌汁を飲みつつ、もう黙って聞くことにしようと心に決めた。


私が口を挟むと結局ややこしくなるだけだ、自覚はしている。



「不思議なことを聞くな。相手は金山という一国の主だ。天川と呼ばれていた城を落した……兄上がな……」



何かを思い出したのか、鬼虎の箸が止まった。



「お兄さん?」


「ああ、儂は父上からも期待されていた。だが兄上は昔から気が弱くてな。色も白く、身体も小さく周りの者から『姫君』と陰口を叩かれ……それでも共に初陣を飾り、兄上は儂よりも首級を上げ、勇敢な姿を見せつけておったな」



珍しい、鬼虎の声がちょっとだけ柔らかくなってる。


お兄さんのこと、慕ってたんだろうな。



って、何すぐ流されてるんだろう、まだこいつが過去から来たなんて……


だけど……やっぱり……



「忘れもせん、儂の首級は五十程だったが、兄上は八十余り。二人で地を埋め尽くす死体を越えながら進み、自らも四人槍で討って……それは見事に一突きで敵の顔を潰し……返り血と砂埃に塗れながらも、凛と立っていた姿は」