「信じる気になった?」


「何を?」



兄の質問に、空を見たまま答える。


蝉が鳴きやんだ山を包むのは、蛙の合唱だ。



「虎がお前のこと気に入ってるって」


「ちっとも!」



即答すると、兄が笑い声を上げる。


蛙の鳴き声も負けてはいない。



「じゃあ虎が過去から来たってのは?」



次の質問には少し考えてしまう。


やっぱり信じられない気持ちと。


ちょっぴり信じてみようかな、という気持ち。



「うーん、というかですよお兄さん。ちっとも継虎さんから話聞いてないじゃないですか」



本人にもうちょっと、自分の家族のこととか住んでいた場所とか聞いてみた方がいい気もする。