「あ、ちょっとは思い当たる節あった?」



兄は意地が悪い。


昔からそうだ、私を真っ向から攻めることがない。


いっつも横道からやってきて、自分で気づくようにただひたすら合図を出す。



そんな兄だから、本当は尊敬してるんだけど。



溶けてしまったバニラアイスのカップを横に置いて、空を見る。


ああいうの弓張り月っていうんだっけ、とかどうでもいいことを考えてみる。



「オレが虎だったら、お前みたいな奴嬉しいけどな」



風鈴が風になびいて、短い音を奏でた。



「気が強くって、ちょっと馬鹿で素直で。滅入りそうになっても、気が紛れるよ」



その二つ目は余計ですけどね、お兄さん。



そう思いながら背を伸ばす。


だいぶ肩に力が入っていたのか、妙に気持ちがいい。