「気に入った」



はいはい、文句でも何でも言いなさいよ、もう私は部屋に引っ込みます……



…………え?



台所に足を一歩踏み入れたところで、予期せぬ美声が風に乗ってやってきた。



「儂は気に入ったと申しておるのだ、思李」



恐る恐る振り返ってみると、ちょっとだけ顔をこちらに向けている鬼虎。


なっ……流し目が艶っぽ過ぎです……ってそうじゃない!



やっぱりこいつ気づいてやがった!!


そうだ、奴はさっき戸開ける前の兄の存在に気づいてたじゃないか。



「あ、思李お風呂上がったんだ」



兄は今気づいたっぽいけど、なんで今のほほんと笑ってられるんだ!?


今の鬼虎の台詞に、兄として言いたいことは何もないの……


 
「良かったじゃん、気に入られて。こんな男前なかなか落ちてないし」



さいですか。