戦国サイダー

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「とうちゃーく」



ここに来たのは実はまだ二度目。


以前失恋、といっても振ったのは私だけど、直後の私を兄が連れて来てくれた。


あのときは真冬、でも今は真夏。


首の裏が少しずつ太陽に焼かれてゆく。



自転車を降りて、適当なところに停める。


虎もさすがにちょっと疲れたのか、息をひとつ吐いていた。


長い前髪がこめかみに張り付いている。



「ここは……」


「虎知ってる?」


「いや、大体の場所はつかめたのだが、ここまで来たことはないな」



この時代でも人がほとんど来ない場所なのだから、戦国時代では足を踏み入れるようなところではないのかもしれない。