なんて、そんなちっさいこと、夏の日差しと目の前の背中が奪い取ってくれた。



いつもは甚平の虎だけど今日は久しぶりにジーンズ。


真っ白なポロシャツは眩しいけれど、真っ白ってあんまり虎には似合わないなと可笑しくなる。



「あ、次の角を左にね」



そんな指示をたまに出しながら、軽やかに自転車は進む。


額に浮かぶ汗を時折ぬぐいながら。


温い風を頬に感じながら。





このまんま、どっかに行けちゃえばいいのに。





現実には有り得ないと思っていたタイムスリップ。


それが目の前で起きて、その人がここにいて。



このまま現実の世界から外れてしまえばいいのに。


なんかよくわからないけど、えいっておっきな力でもなんでもかかっちゃって、戻らなくても良くなってしまえばいいのに。