海の上で花火が咲いた。


見学者の歓声も遠くに聞こえる。



でも、いらない。



花火なんて、瞳に映らない。





そっと、虎の手が私の頬を包んだ。



「お前は、本当によく泣く」



そう笑って、虎は私を抱き寄せてくれる。


その胸が、腕が温かい。



今だけは、素直にその温かさを感じたい。



「わかってる、か」



頭上で虎が呟いた。


私が顔を上げると、目が合う。