「ちょっと思李! 誰それ!?」



が、まあそんな甘っちょろい考えが田舎で通用するかと言えば、間違いだったわけでして。



会場である港から神社への参拝道に着いた途端、友達一団に出くわしてしまった、というお約束な展開に。


第一、この男が目立つのだ。


ここに来るまでに一体どれだけの女の人が凝視してたことか。


年齢関係なく、彼女連れてる男までもが振り返るってどういうことよ。



「あー……えっとね、お兄ちゃんの友達」



瞳をきらきらと輝かせて、さも興味津津といった表情のふたりに、ある意味間違ってはいないことを言う。


その端で親友の綺(アヤ)だけが、じいっと私を楽しそうな顔で見てきていた。



「マジで、さすが思李のお兄ちゃんだけあるわー」



ハイテンションでまくし立てるふたりは、虎に向かって自己紹介なんぞしている。


その問題のご本人様は、さすがに少々面食らったのか、一瞬私を見てから、無表情に。