「いや、すまん。その様な顔をするな。華美だが似合ってないわけではない」



これは、あの鬼虎が吹き出したことに驚くべきか。


私の顔を見て、笑い出した虎に怒るべきか。



「馬子にも衣装とはこのことだな」



その発言を合わせて後者に決定したかったけれど。



案外、ダメな私がここにいて。



久しぶりに微笑んだ顔を見て、一気に全てが緩んだ。



「もう行くのか」


「うん、花火はまだだけど、色々面白いものがあるから、行こう」



そう言うと、虎が立ち上がったので下駄を履きに私も玄関へと向かうことにする。



「気をつけて歩け」



浴衣の皺を直してから足を動かすと虎に唐突に言われた。


振り返ればさっきの頬笑みはどこへやら、まるで私がこけると確信してるかのような小馬鹿にした顔で笑っていた。