「……虎?」



そんな粗相をする人ではないので、様子を窺う。



何で気付かなかったんだろう、若干瞳に涙が溜まっている。



「疲れたから、儂は寝る」



今までは普通に話していたのに、声が弱々しい。



もしや、もしやですよ。



「具合悪い?」



立ち上がろうとした虎を制して聞くと、虎は否定も肯定もしなかった。



それは即ち、肯定なんだろう。



弱ったような姿は見せようとしない、この男なら具合が悪くたってきっと我慢する。



「寝る」


「ちょっ……いいから! ちょっと待って、布団隣の和室にひくから!」



浴衣に舞い上がっていたとはいえ、気付かなかった私は馬鹿だ。



とにかくこのままだと黙って勝手に二階に上がってしまいそうだったので、慌てて和室に畳んで置いていた虎の甚平を渡す。