壁一面の本棚をひたすらにじいっと見つめて探して。


ようやく見つけた、お目当ての本。


もう埃かぶって、背表紙もぼろぼろ。



『拾遺和歌集』


昔、父が何故かよく読んでいて私もいくつか読み聞かせてもらった。


その中に印象的だった歌がある。





忘らるる
身をば思はず
誓ひてし

人の命の
惜しくもあるかな



貴方に忘れられる私のことは何とも思いません

ただ、変わらぬ愛を神に誓った貴方に天罰が下って命を失うのではないのかと惜しまれるのです


 


父は笑いながら教えてくれた。



『これは意味の取り方が色々出来てね。皮肉のようにも、忘れられても相手を想ういじらしさも取れるんだ。だけど、本当のことは詠んだ本人にしかわからないよね』