小さい頃、父の書斎が大好きだった。


たくさんの本に囲まれて、大きな木枠の窓から西日が差しこんで。


デスクの上にはアンティークのランプとたくさんの原稿用紙。


父が仕事をしている中、静かに部屋の端っこで本を読むのが私のお気に入り。



それも今は原稿用紙じゃなくてパソコンになって。


たくさんの本たちはだいぶ色褪せて、新顔たちに場所を譲りつつ主張してて。



私は久しくここに入ってなかった。





夏梅ねぇと別れてから、夜。


しとしとと降り出した雨の音と匂いを部屋に入れながら、私は懐かしい本を探した。


父は資料も参考文献も趣味の本も、全て適当に本棚に置いてゆくから、探すのだけで時間がかかる。


昔はそれが楽しくて、よくアットランダムに本を取って遊んでたけど。


お兄ちゃんとどっちが難しそうな本を取るかで競ったり。


でも今は正直、せめて分類しようよ、と思ってしまう。