兄が酔って失態を見せた翌朝。


予想以上のナイスなリアクションを見せた虎に、私は素直に笑った。


あとから二日酔いの状態で起きてきた兄の前で固まる、さり気無く視線を逸らす、明らかに私に助けを求める。


それが余りにも可笑しかったので、普段のお返しとばかりに何にも助け船を出さなかった。



まあ、結局兄が正直に謝って、その後は今までと変わらない態度でいたせいか、虎もなんとか記憶を押し込めたようだけど。


それに二人の間では事前に約束していたのか、これから出かけるわけで、いつまでも引きずってられないと感じたのだろう。



寧ろ二人っきりで出かけるんだから、しかも数日、もうちょっと危機感を抱いたリアクションとかしてくれても良いのに。


元々大してリアクションを取るタイプじゃないせいか、兄が昼ご飯とも言える朝ご飯を食べ終わる頃には、いつもの虎に戻っていた。



もっと今みたいに色々感情を素直に出せばいいのに、と心の中だけで呟いたのは内緒。



二日酔いを軽減する為に、しみ・そばかすを飲んで治す有名な錠剤を飲んで、ようやく兄が落ち着いた頃にはもう日が暮れかかっていて。


昼寝から覚めた虎を着替えさせ、少しだけ荷物を持たせて、二人を見送った。


最後まで、どこに行くのかは教えてもらえず。


「戸締りはきちんとしろよ」という兄に頷き「気をつけてね」とだけ虎に伝えた。