「なんで、あんなに飲んだの?」


「んー……?」



兄は私の方を見ずに、空をぼーっと眺めていた。


瞳に、月が浮かんでいる。



「内緒」



つられて私も月を見上げる。


ほぼ満月、正確な月齢とか呼び名はわからないけれど、ぼんやり丸いそれは淡い光を放っていた。



「ま、いいけど。そこで寝ないで、せめて畳の上で寝て」



それだけ言って、網戸を開けると。


「はーい」という呑気な声で、兄が笑った。