ただ、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ。



泣きやむまで待っていた私から離れたとき、一瞬照れたような表情を見せて。


「すまぬ」と言ったのが可愛かったり……もした。



それぐらいで家にあげるなんて、危機感無さ過ぎかもしれないけれど、だって玄関戸から引き抜いた日本刀を私に見せつけるように鞘に納めるんですから。


あの無言の圧力は、本当にやめて頂きたい。




「すみません、えーとご職業は……」


「職業?」


「あ、普段何してるのかなぁって」



本当はちょっと聞きたくない質問。


だってさっき、不思議なことを言っていたから。



『伊桜』『我が国』


その言葉を聞いて、私の中にはふたつのことが浮かんだ。