「はい、水」



項垂れる兄に手渡すと、それを受け取りゆっくりと飲み始める。



「まったく何してるのよ。ペース配分ってものがあるでしょう」



こんな小言を言ってしまう自分がちょっと嫌。


でも何か言わなきゃ気が済まないのも事実。



だって、虎があんな微妙な雰囲気になったのは兄がお酒を飲んだせいだ。



「だって……」


「だってじゃないでしょ」



飲み切ったグラスを縁側に置き、再び地面を見つめた兄が言う。



「酔ったらもっと素直になるかと……」


「……は?」



素直? 誰が?


あ、お兄ちゃんは素直になりますよ? 欲求に忠実に行動してましたけど、さっきも。



「なのにあいつ全然酔わないし」


「え? 虎のこと?」