戦国サイダー

平然と言う顔が、人間じゃないと思えてきた。


この世界最強と言われるアルコール度数九十六度、ちなみに火気厳禁、消毒薬にすらなる酒を、半分も飲んでおいてその表情。



この人に、アルコールは一体何をもたらしてくれるのだろう。



そのいつもと変わらぬ眉間の皺や仕草に、身体の底から冷たい感覚が侵食してくる。



「もっ、もうダメ! お酒禁止!」


「あ?」


「いやいやいや! そんな威圧するような顔してもダメったらダメ! 死ぬ!」


「馬鹿を言うな。飲み足りんと……」


「いいえ、もう充分過ぎます! 別の飲み物持ってくるので、ちょっと待ってて下さい!」



虎の目の前にあった、まだ日本酒か焼酎かが半分残っているグラスをかっぱらって、急いで台所へ向かう。


勿論スピリタスも抱えて。



アナタの身体はサイボーグですか、アルコールは瞬時に分解ですか?


それとも戦国武将は酒豪が普通ですか。



グラスの中身は流し台に捨て、お湯を沸かす。


何がいいかと迷うことなく、母の趣味である紅茶のニルギリを選び、ティーポットを用意した。


ティーカップも乗せ、ついでに粉末だけどシナモンも持ってゆくことにする。